異質

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バス停にはベンチが三つあり、僕と君は端に座っている。 この一席分の距離がとてつもなく遠く感じられ、何分かの沈黙が続いた。バスが来る気配もない。人通りもない。生ぬるい風だけが僕たちの間をすり抜けた。 「どうして掃除ばかりしてるの?」 多分踏み込んではいけない内容。それでも気にならずにはいられない内容。 返答は期待していないというと嘘になるが、あまり期待はしていない。 少しの沈黙の後 「自己満」 一言君はそう言って立ち上がった。 僕と目が合って、マスクで表情は分からなかったがついてきても良いよと言われた気がして病院とは逆方向の道を歩いていく君の後ろをついていった。 病院以外でこの町を訪れたことがなかったが不気味なぐらい人気がない。 蝉が町を支配しているかのように鳴いている。途中野良猫とすれ違うぐらいだ。 二十分ぐらい歩いて君が立ち止まった場所は空き地だった。 そこには使われなくなったバスだけがあった。その周りは雑草で覆いつくされていてバスにはスプレーで落書きされていた。 窓は中でカーテンをされていてどうなっているかは分からない。
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