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君は慣れた手つきで扉を開け中に入っていった。
勝手に入って怒られないだろうかとかそんな道徳精神は君に吸い取られたようになかった。
中に入るとそこは普通のバスと変わりなかった。
変わっているとするなら誇り臭さに混ざった異常な程生ごみの匂いがした。
鼻を抑え中に進む。
長椅子のところで座るいつも綺麗な君は何故かこの汚い場所に収まっていて不思議な感覚に襲われた。僕だけがこの場所で異質のように思えた。
君は隣に座る猫の背中を撫でている。その猫からは血が流れていて、きっと死んでいる。
「ここが原点」
君は猫を大事そうに撫でながら語った。
「このバスに乗って私たちは死んだの。汚い私だけが生き残ったから、汚い私を殺して綺麗な私だけを生かした」
「何が必要か分からなくなったからいらないものは全部捨てるようになった。そうすると汚れが気になって仕方ないから掃除をするようになった」
「綺麗な私を保つために」
「でもたまに、汚いものを求めるようになったの。だからここに戻ってきて、汚い心を爆発させる。あなたがしているように」
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