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携帯の灯りが、足元でふっと消えた。
目蓋の裏に少女の手元がしばらく残り、辺りには闇が落ちる。
時々吹く風は冷たく、逢原茜音は柱に身を預け直した。
「灯り、消すのは早くないか? なにも見えない」
「茜音は平気だろうけど、先に消しておかないと眼が慣れないよ」
完成を見ずに遺棄された建築現場だ。荒れたコンクリートの突端に腰掛ける少女がそう言って上を向くのを、茜音は思わず止めた。
「あんまり動くな。ここは九階相当だって、さっき自分で言ったろ」
「平気、平気。茜音がいるもの」
どこか楽しげな声に、あのな、と苦笑する。
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