宇宙郵便局

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 そこまでで日記は途切れていた。この後、ほどなくして大災害が発生して、すべてが無となったわけである。崩れた建物の中でこの日記が残っていたことは奇跡と言っていいのではないか。  アンナの日記を読み終えた私は、持っていた荷物を開封した。中にはヨハンからの手紙と、色鮮やかな玉で組まれた首飾りが入っていた。ヨハンが孫娘に送った首飾り。手紙には、まだ見ぬ孫娘への愛がつらつらと書き連ねられていた。ヨハンは獄中でどんな想いでこの手紙を書いたのだろう。生きていれば10歳になった可愛い孫娘を想像しながら、コツコツ貯めたお金でプレゼントを贈ったのだと思うといたたまれない気持ちになる。でも、娘夫婦が呆気なく命を失ったことを最後まで知らずにいたであろうヨハンは、かえって幸せだったのかもしれないと、私は思った。  私はこの星の哀しき末路とヨハンやアンナ、そしてお腹の子ミラらの死を悼んで、首飾りと日記を重ね合わせ、合掌した。
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