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ちょうどその時、同僚のジョンがそばを通りかかった。ヒューと口笛を吹く。
「はあ。お前が若い女性と一緒なんて珍しいなと思ったら、これが例の取材ってやつか。あ、俺はジョン。聞きたいことがあったら俺にも聞いていいよ」
シルビアは「はじめまして。記者のシルビアです」とジョンに型通りの挨拶をしたあと、また私に向き直った。
「それにしても珍しいお仕事ですよね。他の郵便局ではあまり聞いたことがない話です。まあ、そのせいで本日取材に来させていただいたわけなんですが」
シルビアの疑問に答えるより早くジョンが口を挟んだ。
「こいつ変わりもんでな。エラー荷物の配達を業務の中に入れてくれって上司に掛け合って、認めさせちまいやがった。儲けにならないとか言って渋る上司を『これからは採算度外視の社会貢献の時代です』なんていう屁理屈でケムに巻いちまうんだからな」
「ジョン、お前はもういいからあっちへ行ってな」
私はいちいち割り込んでくるジョンが煩わしかったので、彼を追い払った。彼はちょっとだけ不満そうな顔を見せたが、何も言わず立ち去った。
「失礼ですが、なぜこのようなお仕事をなさろうと?」
「逆に聞きたいんですが、あなたはなぜ記者になろうと思ったんですか?」
私は記者の質問に答える前に、好奇心から彼女に問い返してみた。
「私ですか? 私はただ世の中のいろんなことに興味があっただけです。分からないことはなんでも知りたいっていう生まれながらの性分なんですよ。それよりコウさんのお話が聞きたいです」
「そうですね……。ちょっと長い話になりますがよろしいですか?」
「ええ。構いませんわ」
私は好奇心でキラキラと輝く瞳に戸惑いつつ、その理由を語り始めた……。
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