宇宙郵便局

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 惑星Rの姿は無惨なものであった。かつて栄えた惑星唯一の鉱山都市メタリカは、完膚なきまで破壊された跡が残っていた。大規模地殻変動によるものである。その災害で住民は全滅したという。およそ十年前のことだ。  取り寄せたデータから元惑星管理局だった施設の位置を特定し、私はその残骸を発見することに成功した。建物は壊滅していたものの、幸いにも電子データのいくつかは破損を免れていた。私は残されていた資料から住民名簿をチェックするが、ミラという人物はいなかった。 「おかしいな。短期滞在者も含む惑星住人はすべて記録されるはずなんだが」  思わず漏らした独り言を聞いているものなど誰もいない。私は手掛かりを探して、損壊した建物を次々と捜索していった。それを五時間ほど続けたあと、私は一軒の建物の残骸の中から一冊の日記帳を発見した。記入者の名前はアンナとなっていた。  アンナの日記。昔、どこかで聞いたような気もする。私は誇りにまみれつつもまだ原型を保っていたその日記帳を開いてみた。  その時、通信が入った。ジョンからだ。 「差出人の情報が入ったぜ」 「おお。待ってた。それで?」 「差出人の名はヨハン。これは知ってるな? ヨハンは監獄惑星ヘルの囚人なんだ」 「なんだって! じゃあ、この荷物は監獄から送ったってことか?」 「そうみたいだな。しかもかなり高齢でな。荷物発送後、しばらくして発作が起こってそのまま病死しちまったんだってよ」  なんと。もう差出人はこの世にいなかったというのか。私はヨハンの哀しい運命に身震いした。
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