宇宙郵便局

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「ちょうど十年ほど前に、ヨハンは殺人罪で監獄惑星ヘルに収容された。トラブルに巻き込まれ、勢いで三人も殺しちまったらしいが、情状酌量が認められ、終身刑ということで落ち着いたようだ。当初は外部の情報とはまったく遮断されていたが、十年経ち、やっと贈り物とかも許されるようになったということだ。十年も刑務所で服役していれば、多少は自由に使えるお金も貯まっているだろうから、そういうことも出来たらしい」  なるほど。それがこの荷物ってわけか。だいたいの事情は分かった。 「それからな。ミラっていうのは、ヨハンの妻の名らしい。若い時に亡くなってるようだ」 「じゃあ、ヨハンはなんで惑星Rにミラ宛に荷物なんて送ったんだ?」 「二人の思い出とかがあるのかな。それともボケちまってたか」  ジョンの軽口はあながち冗談とも言えないかも知れない。無人になって久しい惑星に、しかもとっくに死んでるはずの相手に、誰がわざわざ荷物を送るというのか。 「それとな。ジョンには唯一の身内がいる。アンナっていう一人娘だ。彼女が今どこにいるかまでは分からない」 「アンナ? 今、アンナって言ったか?」 「ああ。それがどうした?」  怪訝そうなジョンの声が聞こえる。 「今ちょうどアンナの日記を手にしているところだ。もしかしたら……」 「アンナの日記?」 「すまん。一旦、通信を切る」  私は居ても立っても居られなくなった。早くこの日記を読まねば。そこに何かあるに違いない。私はむさぼるようにアンナの日記を読み始めた。
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