25人が本棚に入れています
本棚に追加
【アンナの日記】
1月10日
惑星Rに着いてから3日経った。やっと新住居にも慣れてきた。夫のカーネルともに、これからこの星で新しい生活をしていくのかと思うとワクワクする。それにお腹の中の新しい命と一緒に……。
1月25日
この星の唯一の都市である鉱山都市メタリカの賑わいは凄まじい。毎日、他の星から次々に人が流入している。掘削そのものはロボット主体で行われるのだが、まだまだ人間がしなければならない仕事もたくさんあるらしい。この惑星はもともとは無人惑星だった。この星に希少金属であるインジウムが大量に埋蔵されていることが発見されてから、開拓鉱山惑星になった。カーネルが「ここに移住して一儲けしようぜ」と言ったときには「本気なの?」って笑っていたけど、実際来てみて良かった。活気があって毎日が楽しい。
アンナの日記は、その後も楽しい日々が続く様子が書き綴られているのだが、ある日突然、そのトーンが大きく変わる。
2月20日
カーネルが悪いニュースを持ち帰ってきた。発表されていたインジウムの埋蔵量データが、実は虚偽データだったというのだ。実際には発表された量の1%ほどしかなかったらしい。「これから大変だ」と項垂れるカーネルに、なんて言葉をかけていいかわからない。
3月1日
ついにインジウムが枯渇した。採掘会社は現在、鉱脈に見落としがないか調査中だという。カーネルら、作業員の動揺は半端ないものだという。
3月10日
カーネルたちは連日お酒を飲んで、鬱憤を吐き出している毎日だったが、ついに鉱山の廃山が正式に決まった。度重なる調査でも採掘の続行は無理と判断されたようだ。採掘会社は撤退、作業員は全員解雇となった。
最初のコメントを投稿しよう!