宇宙郵便局

9/12
前へ
/12ページ
次へ
 3月24日  メタリカからだんだん人が減ってきた。職を失った作業員たちは、我先にと他の星への再就職先を探しに旅立ってしまい、彼らによって潤っていた街のお店も次々と閉鎖する始末。だが、それでも残る人はいる。この惑星に来てから出来た私の友人たちもまだたくさん残っている。元気出さなきゃ。  4月1日  カーネルは仲間と独自に新たな鉱脈を探す旅に出ることにしたようだ。私が出産間近であることを考慮して、他の星への再移住を諦めてくれたみたいだ。幸い、私と仲の良いエリカや助産師のレナも、少なくとも私が出産するまではこの星に残ると言ってくれた。カーネルの旅立ちも、私が出産して少し落ち着いた頃ということで予定を組んでくれた。このお腹の子はみんなから出産を待ち望まれている。なんて幸せな子だろうか。  4月3日  そういえば父は元気にしているだろうか。この星に向けて出発してから一度も連絡をとっていない。かなりの遠距離なので仕方がない。お腹の子が産まれたら、父をこっちに呼び寄せてもいいかな。まあ、カーネルが新鉱脈をみつけたらの話だけどね。  母のミラが私が幼いときに亡くなったので、父のヨハンは男手一つで私を育ててくれた。私が生まれたとき、父は既に四十を過ぎていたので、その喜びようは大変なものであったという。  カーネルと結婚することになって、一時は落ち込んでいたが、私のお腹に赤ちゃんがいることを知ると、二人の結婚を祝福してくれるようになった。やはり孫の顔は見たいのであろう。  出発前にお腹の子の性別と、私たち夫婦で決めたこの子の名前を伝えた。そのときの父の顔はいままで見たことのないくらいふにゃけた顔で、私が思わず吹き出してしまったほどだ。あれじゃ、出産を知ったら、すぐに飛んでくるに違いない。  本当にこの子はみんなに愛されている。ああ、早く我が子に会いたい。この子はきっと幸せに育つし、周りの人もきっと幸せにしてくれる。若くして命を失った母の分もしっかり生きてね。我が子、ミラ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加