静まり返った、生徒会室。
周りを見渡す。
今いるのは――深見四兄弟と春原さんだけ。
……よし。
私、よく耐えた。
ひとつ、息を吐く。
そして――
「遼……貴様!」
隣でのんびり座っている遼の胸ぐらを掴み、思いきり揺する。
「わぁ、美夜ってば情熱的だなぁ~」
「黙れ、このクソ顔面凶器男!」
「それ、“クソ”を除いたら褒め言葉じゃない?」
「ぐっ……!」
息を呑む。
そんな私ににっこりと微笑む遼は、やっぱり顔面凶器で――
一瞬、ドキリとしてしまった自分に腹が立つ。
「一発殴らせろ!」
「え~、嫌だよ。痛いじゃん?」
「当たり前だろうが!痛くしたいから殴るんだよ!」
拳を振り上げた、その瞬間――
パシッ。
腕を掴まれた。
ハッとして見下ろすと、遼は楽しそうに笑っていた。
「お前、本当に……じゃじゃ馬だな」
そして、少しだけ声を落として、
「そういうところ、可愛いけどな」
チュッ。
唇に、軽く触れる感触。
「~~~っ!」
慌てて口元を押さえる。
仰け反った私の腰を、遼が引き寄せた。
「本当に……」
耳元で、低く囁く。
「お前って、予想外だな」
思わず顔を上げる。
近い。
遼の顔が、すぐそこにあった。
そして――
唇が、重なった。
……
…………
………………
死ぬっ!
しかもこれ――!!
息が、できない。
窒息しそうになって、遼の背中を叩く。
離れない。
死ぬから!!
お前、私を殺す気か!?
グーで背中を叩きまくる。
やっと、唇が離れた。
ゼェ、ゼェと息を吸う。
顔を上げた、その瞬間――
四人の視線。
唖然。
……完全に見られてた。
私はゆっくり遼を見上げ、そして四人を見る。
「ぎ……」
「ぎゃーーーーー!!」
叫ぶ私を見て、
「赤くなったり青くなったり、忙しい奴だな」
遼は、あははははっと爽やかに笑っていやがる。
(こいつ……)
(こいつ……)
(マジで〇す!)
怒りに拳が震える。
けど――
遼は、その殺気に気付いている。
私は深呼吸を繰り返し、
――にっこり笑った。
遼が首を傾げる。
その瞬間。
パァン!!
綺麗な音を立てて、右の平手打ちが頬に炸裂した。
乾いた音が、生徒会室に響く。
「遼……最低っ!」
唇をゴシゴシと拭いながら、私は背を向ける。
「みぃ……!」
遼の声が、背中を追う。
「来ないで!」
振り返る。
「あんたの顔なんか、見たくない!」
睨みつけた、その瞬間。
――遼の顔が、見えた。
傷付いた顔。
私よりも。
……だけど。
私は、そのまま背を向けた。
バンッ!
ドアを叩き閉める。
重い音が、生徒会室に響いた。
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