カトルカール

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「いってらっしゃい」  夫と子どもたちを送り出し、食卓を片付ける。  シンクの食器を下洗いして、食洗機に入れる。  今日は月曜日だから、燃えるゴミの日だ。  ゴミを出して、洗濯物を洗濯機に放り込む。  新聞のお天気欄を見る。今日は一日、晴れの予報。  それならばシーツも洗おうと、寝室に向かう。  すると、クローゼットの様子が目に入る。ここも片付けなくては。  いやここよりも、いつも目に付くリビングの棚の雑誌を何とかしなくちゃ。  でも、スーパーも行って来なくてはいけないし。  そんなに、あれもこれもいっぺんにはできないでしょ。  でも、慌てることないわよね。  だって、今日から私はフリーなんだもの。  仕事に行かなくてもいいと思うと、解放感に心が浮き立った。  シーツをはがそうとして、ちょっとだけとベッドにこてっと横になる。  ちょっとだけ。  もう一度布団にもぐり込んだ。  夢も見なかった。目が覚めないまま、泥のように眠り続けた。  ぼんやりと時計を見て、ぎょっとした。え! もうすぐ6時?  一瞬、朝かと思って慌てたが、違うとわかってほっとする。  安堵したのに、窓の外を見てため息に変わる。  もう日はとっぷりと暮れていた。 「あ! 洗濯物!」  干さないまま、洗濯機の中で日がな一日置いてしまった。生乾きの匂いがする。落胆し、もう一度洗い直す。  朝の解放感がどこかに吹き飛んでいる。  一日中眠っていたのに、スッキリしていない。  この寄る辺ない身が、心許ない気持ちにさせるのだ。  ああ……。  私はこれからどうしたらいい。  頭の中で『失業者』という言葉が、プカプカと漂っていた。
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