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「一度、ケーキ屋さんに勤めたんだけど、手際が悪かったのよ。どんどん作らなくてはいけなくて。スピードが勝負で。だんだん仕事に行くのが辛くなってきたの」
せっかく、パティシエールになれたのに、自分で逃げ出してしまったのだ。
「そうかあ。でもお菓子作るの好きなんでしょ。だったら、今からだって遅くないんじゃない?」
「え?」
その時、タイミングよくオーブンがチーンと鳴った。
扉を開けて、焼き具合を確認する。生焼けではないようだ。
オーブンから取り出す。
「うわあ! ふっくら盛り上がってる!」
「もうちょっと冷めるといいんだけど」
型から外して、ケーキクーラーにのせる。
「ちょうどいいんじゃない? 時間ができて。お店の計画練りましょう」
「え?」
「そうね! 4人でできるんじゃない?」
「そうそう。このケーキの名前何て言ったっけ? 1/4ずつの4つで一つなんでしょう?」
「……カトルカール」
「まずは、ネットで販売してみる? リモートの教室もいいと思うのよ。そこは、私が担当ね」
しのぶさんが手を挙げる。在宅でコンピュータの仕事をしている。
「じゃあ、仕入れ担当は私ね」
由美子さんの家は、食料品店だ。
「えー、じゃあ私は? 言い出しっぺなのに」
麻実さんがふくれる。
「麻実さんは全体の演出と、プロデュース。宣伝もよろしく」
「おう、合点承知の助!」
「で、お店の名前は?」
「そんなの、カトルカール専門店だもの、カトルカールでしょ」
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