カトルカール

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 仕事をしなくなってから、2ヶ月近くたっていた。  今日は雇用保険受給の認定日なので、ハローワークに行く。  でも、楽にもらえるわけではない。  ちゃんと働く気があることを示さなければならない。  勤労は国民の義務。  目的は、再就職して社会に貢献することなのだ。  番号チケットを取り、認定窓口の前で順番を待つ。  10人ほどが所在無げにしている。みんな無表情だ。  同じ認定日の同じ時間に指定された人だけで、これだけの人数がいる。  1時間後の時間を指定された人もいる。  明日の認定日に来るように言われた人もいる。  この管轄地域内で、どれだけの人が職にあぶれているのか。  ほどなくして、窓口の表示板に私の持つ番号が表示された。  私はクリアファイルから資格者証と認定申告書を出して見せる。 「はい、中山純礼(なかやますみれ)さんですね。ここのところに〇をつけてください」 「は、はい、すみません」  『仕事が紹介されたら、すぐに応じられますか』という設問のところが空欄だった。  すぐに?  勤続年数が長かったので、雇用保険をもらえる日数はかなり長い。  このまましばらく、働かずにいたいくらいだ。 『応じられない』の方に〇をつけようか。  でも当然、理由を聞かれるだろう。項目も用意されている。  健康理由、家庭の事情、自営、就職……。  疲れているのは事実だ。けれど、これには然るべき診断名が必要だろう。  
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