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百円均一ショップに行くと、立ち寄るコーナーがある。製菓グッズのコーナーだ。可愛いカップケーキのカップ紙や粉砂糖、アーモンドスライス、チョコチップも買っておこう。
「あれ? すみれさん?」
聞き覚えのある声に、後ろを振り返る。
「ああ、やっぱり」
ママ友だちの森永さんだ。彼女は手が器用で、手作り品をネットやイベントで販売している。
「ああ、さやちゃんママ、久しぶり。元気だった?」
「元気元気。今日は、お仕事休み?」
「あー、休みと言うかー、人生のお休みと言うか」
「あ、何? お仕事辞めたの?」
ここしばらく、こう聞かれると抵抗がある。自分から辞めたのなら、辞めたと言えるのだが、契約更新にならなかったとは言いにくい。
「まあ、そんなところ」
「じゃあ、時間ある? お茶しよう」
森永さんは、にっと笑うと、さっさとレジに向かう。私も慌てて後を追った。
お互いに近況を報告し合う。森永さんとは、娘の美花の子育てサークル時代からの友だちだ。それでつい、子どもの話題になる。
「ねえ、すみれさん。すみれさんの話を聞きたいな」
「私? 私の話なんて、別におもしろくもないわ」
ふうんと、森永さんはスプーンでコーヒーを混ぜる。
「じゃあ、さっきは何を買ってたの?」
「ああ、お菓子の材料よ」
「え? お菓子とかケーキとか作れる?」
いきなり森永さんの目が輝く。
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