カトルカール

6/11

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 百円均一ショップに行くと、立ち寄るコーナーがある。製菓グッズのコーナーだ。可愛いカップケーキのカップ紙や粉砂糖、アーモンドスライス、チョコチップも買っておこう。 「あれ? すみれさん?」  聞き覚えのある声に、後ろを振り返る。 「ああ、やっぱり」  ママ友だちの森永さんだ。彼女は手が器用で、手作り品をネットやイベントで販売している。 「ああ、さやちゃんママ、久しぶり。元気だった?」 「元気元気。今日は、お仕事休み?」 「あー、休みと言うかー、人生のお休みと言うか」 「あ、何? お仕事辞めたの?」  ここしばらく、こう聞かれると抵抗がある。自分から辞めたのなら、辞めたと言えるのだが、契約更新にならなかったとは言いにくい。 「まあ、そんなところ」 「じゃあ、時間ある? お茶しよう」  森永さんは、にっと笑うと、さっさとレジに向かう。私も慌てて後を追った。  お互いに近況を報告し合う。森永さんとは、娘の美花の子育てサークル時代からの友だちだ。それでつい、子どもの話題になる。 「ねえ、すみれさん。すみれさんの話を聞きたいな」 「私? 私の話なんて、別におもしろくもないわ」  ふうんと、森永さんはスプーンでコーヒーを混ぜる。 「じゃあ、さっきは何を買ってたの?」 「ああ、お菓子の材料よ」 「え? お菓子とかケーキとか作れる?」  いきなり森永さんの目が輝く。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加