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「うん、まあ。得意なものしか作らないけどね」
「そう言えばSNSに、パウンドケーキの写真をUPしてたよね。あれって、なかなかふくらまないんだけど」
ずいぶん前に載せたのに、よく覚えていると感心する。
「ああ、バターの混ぜ方が足りないか、混ぜすぎなのかも。私は最近はベーキングパウダー使って、オイルで作るから」
「ええー、それ教えて欲しい。今度習いに行っていい?」
そうか。平日の日中、家に居るのだし、そんなこともできるのか。
「うん。いいわよ。いつがいいかな」
スケジュール帳を出し、予定をすり合わせる。
「あ、もう一人か二人誘っていい? 由美子さんやしのぶさんは家に居るから、のってくると思うのよね」
「え? 由美子さんにしのぶさんて?」
「ああ、けんちゃんママと、幸太郎くんママよ」
二人ともサークルでいっしょだった人たちだ。あの頃はよく子育ての悩みを話しあったものだ。森永さんはスマホをササっと操作している。
「あ、二人ともOKですって」
「うわ。さすが、さやちゃんママは、やることが速い」
サークルでも仕切っていたのは、森永さんだった。
「ねえ、すみれさん。子どもはもう大きくなって、手がかからなくなったし、今度は私たち自身を充実させない? だから、さやちゃんママは卒業。これからは名前で呼んで」
なかなか、下の名前で呼び合うことが無い。ママとか奥さんの割合や、仕事での顔ばかりが大部分を占めていたのだ。
「ああ、だから私の名前で呼んでたのね。わかった。じゃあ、麻実さんで」
「うん! よろしく」
麻実さんは、鼻にきゅっとしわを寄せて笑った。
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