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「ねぇ、結衣。なんで広瀬先生に、あんな態度をするの?」
イケメンだし、優しいし。授業もわかりやすい。
三拍子だよ?
やけに力を入れて演説する夏穂ちゃん。
うん、この早坂市立高等学校以来赴任して言うこと間違いないと、校長からも太鼓判を押されているという評判の先生でもある。
名原佑樹先生とは同期で仲が良いのも有名。
どちらもイケメンで若くて。
他の先生方は結構年輩者もいる中での、頼りのある二人と言われている。
だけど、私はなんとなく苦手だ。
どこが?と言われれば悩むけど。
何か近づいてはいけないと、私の中で何かが警告を出している。
それが何かはわからない。
黙っていた私を見て夏穂ちゃんは溜息をついた。
「ま、人には好みがあるしね。みんなが好きだからって必ずしも好きとは限らない。だって、結衣の初恋はあの王子様だものね?」
にやにやしながら夏穂ちゃんは私を見る。
ちゃんとした記憶は無いけど。
私には微かな感覚がある。
それと安心させるような声。
これだけは不思議と記憶に残っていた。
生憎誰だか思い出せない。
「記憶が戻ればわかるかもしれないね。そうしたら運命の人に会えるかも。」
夏穂ちゃんの頭の中では少女漫画のような話が出来上がっている。
だけど、心の中で得体の知れない不安がある。
″━━━━貴方はまだ早い。″
なんて言っていた人がいたような気がするのよね。
早いって、どういう意味なんだろう。
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