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「面白い話よ。私の従兄弟が最近遊びに来たの。その時に水無月さんを見たらしいんだけど、何処かで見たようなって話していたのよね。」
厭らしく唇を歪める女子生徒。
「………………………。」
それを見て、無言で見つめた。
挑発的な言葉に周りからは興味の言葉が出てくる。
″何よ、早桜(さくら)!″
″面白そう!″
「結衣。」
「別に構わないわ。」
私の隣では夏穂ちゃんがオロオロと慌てたように見る。
いつまでも隠し通せる訳ではない。
いつかはわかるかもしれないのだから。
あの他人達は許さないのね。
内心覚悟は決めてはいたけれど。
「水無月さん、あなた以前ある地域に住んでいたわよね。私の従兄弟が彼処にいたの。直接関わりはなかったけど、かなり有名だったみたいよね?」
その言葉を聞いた私の足が止まった。
「それで?犯罪はしていないわよ。」
振り向いた私の表情に、挑発的な言葉を発した女子生徒が息を飲む。
周りもてっきり犯罪絡みだと思ったのだろう。
開こうとしていた口は間抜けにも空いたままの生徒が何人かいた。
「他人には知られたくない事、一つや二つある。それを面白く話して楽しいかしら、上条さん?」
どんな表情をしているのだろう。
挑発的な言葉を発した女子生徒は悔しそうに唇を噛む。
「ふん!面白くない。折角話そうと思ったのに。話しても貴方は怯まないでしょうね。そこが嫌いなのよ。行こう、愛莉に、水海。」
側にいた取り巻きに声をかける。
「え?う、うん。」
声をかけられた二人は顔を見合わせている。
「ほら、行こうよ。」
挑発的な言葉を発した女子生徒は、足音を立てながら私の側を歩く。
キツイ香水と化粧の匂い。
縦巻きに巻いた髪の毛髪剤の匂いも相まって目眩がする。
茶色系の髪をする女子生徒、上条早桜さんは追い抜きざまにボソッと呟いた。
「その冷静な態度がいつまでもつかしら。私には貴方の秘密を握っているのよ水無月さん。面白い情報をね。出しゃばった真似をするなら噂をばら撒くから。それだけは覚えていて。」
ふんと鼻を鳴らして足早に歩いていく。
待ってよ早桜━━━━━━。
足早に歩いていく女子生徒の後を追うように他の二人も歩いていった。
″なんだよー、面白くない。″
野次馬に集まってきた生徒達は、呆気に取られながら各自教室へと歩いていく。
「結衣、大丈夫?」
不安そうに夏穂ちゃんが尋ねてくる。
「大丈夫よ、夏穂ちゃん。」
濁った空気を取り払うように柔らかく笑った。
まだ重苦しい空気はあるけれど。
「そう。なら、いいけど。」
足早に去った上条さんの背中を見て、夏穂ちゃんは小さく呟いた。
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