【Transfer student〜転入生】

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ざわざわとざわめく廊下を夏穂ちゃんと歩く。 あんな堂々と騒ぐような事をすれば注目を集めるのは自然の事。 おとなしく、静かに暮らしていく。 それが私の唯一の願い。 あの場所を離れて暮らしていくには、目立たないようにと思ってはいたけど。 どうやらそれは無理みたいね。 ま、何故か変質者には狙われないみたいだけど。 今、話題の。 口酸っぱく言われている、お母さんのおかげかもしれない。 絶対に夜は買い物へ行かせない。 例え、急な必要な材料とかあったとしても。 昔から不思議には思ってはいるけど、あえて口にしない。 何かを隠していると気づいたから。 それを追求すれば問題は解決出来るのかもしれないけど。 今の平穏な、家族の幸せを守りたいなら聞かない事も必要なのかもしれない。 例え、両親に似ていないとしても。 ふと足を止める。 2年1組と掲げられた教室へ辿りついた。 中にはガヤガヤと騒がしい声が聞こえてくる。 ホームルーム前だからなのか、やけに騒がしくて元気のある声だ。 もう伝わっているのか、中には転入生の話題をしている生徒もいた。 廊下側でさえも聞こえるのだから、中はもっとだろうな。 夏穂ちゃんと一緒に教室の中へ入る。 「おはよう!!」 教室に入った途端に夏穂ちゃんが声を出す。 ざわついていた教室が一瞬静かになる。 ん? 夏穂ちゃんと私はお互いに顔を見合せた。 「おはよう!如月さんに水無月さん。」 教室の入り口にいた女子生徒が挨拶をする。 「な、何かあったの?」 ちらちらと、私と夏穂ちゃんを見るクラスメートに座っていた女子生徒は小さく息を吐いた。 「彼女よ、上条さん。ほら。」 後ろへと視線を促した。
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