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促されて後ろを見れば上条さんが腕を組みながら私を見ている。
異様な雰囲気に、クラスメートの誰もが意見を言えずにいる。
「全く上条さんにも困ったものよね?いくら親が権力者だからって。」
はぁと困ったように溜息をつく女子生徒。
上条早桜さんの父親は、この街では市議議員をしている方で、その父親に目を付けられた会社は潰されるとか。
いわゆる、権力者のある父親がいるから好き勝手出来る。
例えば気に入らない人を追い出すのもね。
だから、私が隠している事も権力を使えば簡単って事。
それだけは避けたい。
どれだけ、私達が苦労したか。
あの場所にあった事は思い出したくない。
記憶喪失だけど、小さい頃の事は覺えている。
だからこそ守りたいの。
ハナおばあちゃんが大切にしていた私達家族の絆。
私は強くならなくてはいけない。
ヒソヒソと至るところで何やら話しているのが見えてくる。
話題になる物ならなんでもいい。
例え、他人を傷つけるとしても。
それが何気ない会話の始まりなのだから。
重苦しい空気が漂う中。
「何をやっているんだ?今からホームルームを始める。各自席に戻りなさい。」
出席簿を叩きながら入ってくる人物に、教室中の空気が変わった。
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