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名原先生が入ってきた途端に、バラバラに座っていた生徒達は一斉に席へ向かう。
その光景を確認した名原先生は軽く咳払いをした。
「まず、初めに噂になっていると思うが『遅くなってすみませんでした』」
名原先生の話す言葉を遮ったのは。
「……………………如月和樹。」
入り口に立つ生徒を見て呆れたように溜息をつく。
「チャイムがなる前で良かったな。しかし、いい加減に治した方がいいな。お姉さんを見習ったらどうだ、如月佑樹。まあ、とにかく席に着け。」
ハァハァと息切れをする如月佑樹をチラっと見た。
「すみませんでした。今回からは気をつけます。」
よれよれの制服姿で入ってくる男子生徒に、するどい眼差しで見る女子生徒がいる。
ふと、その視線がをたどってみる。
睨んでいたのは夏穂ちゃんだった
か、夏穂ちゃん。
般若のような顔をした夏穂ちゃんに気づいた佑樹君は苦笑いをしながら、そそくさと自分の座るべき席へ向かった。
夏穂ちゃん、怖い。
後ろの席に座っていた私は小さく息を吐く。
「これで全員だな。じゃあ、改めて転入生を紹介する。どうぞ。」
名原先生の呼びかけに一人の生徒が教室へ入る。
柔らかい髪は肩まで伸びていて、見る人を一瞬にして取り込むような雰囲気があった。
場違いとも言えるような妖艶さ。
同じ高校生とは言えない転入生に、クラスメートの誰もが黙っていた。
無理も無い。
入ってきたのは女子生徒だった。
固まっている私達を見て、小さく笑ったのは誰も知らない。
「Nice to meet you(初めまして。)櫻井瑠花(サクライルカ)と申します。」
ニコッと可愛らしい笑顔で微笑んだ。
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