【Temptation〜誘惑〜】

1/24
前へ
/122ページ
次へ

【Temptation〜誘惑〜】

完璧すぎる転入生、櫻井さんに誰も言えなかった。 パチパチパチパチパチ。 あまりにも綺麗な所作に思わず拍手をした私。 つられて周りも合わせるように拍手をする。 その音を聞いた転入生、櫻井さんはゆっくりと顔を上げる。 一瞬だけど、櫻井さんの瞳に気がついた。 え? 思わず瞬きをする。 今のは何? 何かの間違いよね? おそるおそる、もう一度櫻井さんを見る。 私に気がついたのか可愛らしい笑顔で、にっこりと笑った。 やっぱり見間違いよね。 瞳の色が紅いだなんて? 落ち着かせる為に掌を強く握りしめる。 まさかあり得ない。 人間が紅い瞳をするなんて。 それも宝石のガーネットのような血の赤さだった。 怖いじゃなく、綺麗だけど。 うん。 やっぱり気のせいよね。 自分自身納得をさせる為に自己完結をした。 【…………………さすが、血は争えないって事ね。】 そんな私を見て櫻井さんは小さく微笑む。 「ん?櫻井さん、何か言いましたか」 「いいえ?ただ。楽しくなりそうかな?と思いまして。」 不思議そうに尋ねる名倉先生へにっこりと笑う。 「そうか!!最初が肝心だもんな。うーんと席は。」 ふむふむと呟きながら教室中を見渡す。 「如月夏穂!確か、隣の席は空いていたよな?」 指名された夏穂ちゃんはえ?と驚いている。 「あのショートカットの娘がいるから席は彼処へ。」 ニコニコと笑う名倉先生は、夏穂ちゃんを指差す。 「ありがとうございます。」 名原先生の指した方向へ転入生が歩いていく。 立てば芍薬座れば牡丹であり百合の花のような姿に、男子生徒からは見惚れるような溜息が聞こえてくる。 「これから宜しくお願いします。」 やがて、夏穂ちゃんの席に着いた転入生、櫻井さんは手を出した。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加