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広瀬先生は、私の顔を見て深く溜息をついている。
「まさか、水無月さんが、こんなに積極的とは。驚きましたよ?」
「積極的?」
広瀬先生に言われるまで、誰も来ていない事に気づいた。
自分の行動の楽観的さに顔から火が出るほど熱くなる。
それを見る広瀬先生の意味深な眼差しに気がづかなかった。
「俺の友達は大人でして。水無月さんが仮に一目惚れをしたとしても、年齢ってものがある。現に俺が高校生と付き合ってバレたら懲戒処分やロリコンと言われるんだろうな。高校生には、高校生に相応しい恋愛がいい。」
「広瀬先生に言われなくてもわかっています。」
やけに冷静な広瀬先生の言葉が胸に突き刺す。
これが振られた痛みなのか、わからないけたど。
でも、お兄ちゃんには逢いたかった。
私の気持ちに気づいた広瀬先生が口を開いた。
「アイツ、急な用事があって帰ってしまいました。……………ごめんな。」
何故か最後の声が震えているように聞こえるのは気のせい?
「いいえ。私がどうかしていたんです。」
逢いたかったけど用事があるなら仕方がないよね。
「広瀬先生、すみませんでした。」
ペコリと頭を下げて、その場から離れる為に歩き出す。
『………………なんで声を掛けたんですか。』
広瀬先生は私が遠くなるのを見届けてから上を見上げる。
『……………………さあな。』
唇を歪めて笑う男に、広瀬先生は溜息をつく。
『ただな。思った以上に輩は早く動いている。あの娘を欲しさにな。だから、俺が動いたまでだ。これからが大変になるぞ。』
ふっと黒い笑みを浮かべて微笑む男に、広瀬先生はわざとらしく息を吐いた。
相変わらず、何を考えているのかわからない方だ。」
やけに楽しく話す男に、広瀬先生は深い溜息をついてボソっと呟いた。
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