7人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
【IRapid approach 〜急接近〜】
「あの、櫻井さん。私は本当にお腹が空いても大丈夫です。それより五時間目に間に合わないと。」
いけないんでは?と思う私と、女の子にしては力強い力で私の手首を掴み歩く櫻井さん。
滅多に見ない女の子。
本当に日本人形が歩いているような綺麗な人に、廊下を歩いている生徒達は櫻井さんを興味本位で見ている。
モデルのような綺麗な人。
歩くたびに、黒い髪の毛がサラサラと靡かせていた。
「あの、どちらへ行くんでしょうか?」
敬語で話かけた私の言葉に、歩いていた櫻井さんの足が止まった。
「同級生だから敬語は止めて。瑠花でいいわ!」
「はあ。」
強い口調で言われた私は恐縮してしまう。
そりゃ、そうだけど。
転入生しては、やけに落ち着いている。
転校ばかりしているから?
でも、郷には郷に従えって言葉があるように、新しい土地に来たなら合わすように戸惑うと思う。
少なくとも私はしてきた。
あの人達に知られたくないってのが一番強かったから。
溶け込むにはおとなしく目立たないようにする。
そうする事で、お母さんを泣かせたくなかった。
無意識に考えている中、櫻井さんがボソリと小さく呟いた事は気がつかなかった。
【あそこならうってつけかもしれない。邪魔をされない為には、あの事をしなくちゃ。】
クスリと小さく微笑む櫻井さんに引っ張られるように来たのは。
″━━━━━保健室━━━━″
と掲げられた場所だった。
「……………ほけんしつ?」
呆気に取られていたせいかカタコトな日本語で話してしまう。
「倒れたら保健室でしょ?だとしたら、ここが一番最適♪」
ニコッと微笑んだ櫻井さんは、保健室の扉を開けた。
最初のコメントを投稿しよう!