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「失礼します。」
中へ入ると消毒液の匂いが鼻を掠め。
「斉藤先生?いらっしゃいますか。」
中へ入り、保健室担当の先生の名前を呼んだ。
「お昼だから、何処かへ行ったのかな。」
辺りを見渡すと、使用の為に使う机の上に張り紙が置かれてあった。
″━━━━私用の為に空けときます。用事の方は必ず記入をお願い致します。
尚、消毒の為の医療品を使用する際には、必ず職員室の先生に許可を申し出てください。緊急の時も必ず許可をお願い致します。斉藤早希。″
「先生、いないのね。」
カタンと音を鳴らして座った櫻井さんは、机に置かれてある用紙に名前を書いている。
「ついでに、水無月さんのも書くね。」
上目使いに見る櫻井さんに、少しだけドキッとする。
日本人形みたいな綺麗な彼女は、何をしても惹かれやすいというか、胸を高鳴りさせる要素がある。
同性なのに、ドキッとするなんて。
ドキドキと聞こえる心臓の高鳴りを知りつつ、櫻井さんの書く字を見る。
完璧な達筆な字。
綺麗な姿に字まで綺麗なんて凄いなぁ。
「櫻井さん、習字を習っていたんですか?」
「…………いいえ。母親から教えられていたの。字を綺麗に書くのも勉強だとね。」
「勉強ですか。」
私の名前を書いている櫻井さんの声が、やけにキツくなったのは気のせい?
なんか厳しいのかな?
「私、いろんな場所を転校していたので。」
私の疑問に気づいた櫻井さんが顔を上げた。
憂いな表情に、私の視線が釘付けになる。
【人間界の勉強をする為によ。あとは。念願の……″━━━Find you(あなたを見つける為)━━━″】
私と目が合った櫻井さんは何故か綺麗に微笑む。
美少女に微笑まれると、流石に照れるなあ。
なんて、内心思ってはいたけど。
その前に、何かを呟いてはいたよね?
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