【IRapid approach 〜急接近〜】

2/20
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「失礼します。」 中へ入ると消毒液の匂いが鼻を掠め。 「斉藤先生?いらっしゃいますか。」 中へ入り、保健室担当の先生の名前を呼んだ。 「お昼だから、何処かへ行ったのかな。」 辺りを見渡すと、使用の為に使う机の上に張り紙が置かれてあった。 ″━━━━私用の為に空けときます。用事の方は必ず記入をお願い致します。 尚、消毒の為の医療品を使用する際には、必ず職員室の先生に許可を申し出てください。緊急の時も必ず許可をお願い致します。斉藤早希。″ 「先生、いないのね。」 カタンと音を鳴らして座った櫻井さんは、机に置かれてある用紙に名前を書いている。 「ついでに、水無月さんのも書くね。」 上目使いに見る櫻井さんに、少しだけドキッとする。 日本人形みたいな綺麗な彼女は、何をしても惹かれやすいというか、胸を高鳴りさせる要素がある。 同性なのに、ドキッとするなんて。 ドキドキと聞こえる心臓の高鳴りを知りつつ、櫻井さんの書く字を見る。 完璧な達筆な字。 綺麗な姿に字まで綺麗なんて凄いなぁ。 「櫻井さん、習字を習っていたんですか?」 「…………いいえ。母親から教えられていたの。字を綺麗に書くのも勉強だとね。」 「勉強ですか。」 私の名前を書いている櫻井さんの声が、やけにキツくなったのは気のせい? なんか厳しいのかな? 「私、いろんな場所を転校していたので。」 私の疑問に気づいた櫻井さんが顔を上げた。 憂いな表情に、私の視線が釘付けになる。 【人間界の勉強をする為によ。あとは。念願の……″━━━Find you(あなたを見つける為)━━━″】 私と目が合った櫻井さんは何故か綺麗に微笑む。 美少女に微笑まれると、流石に照れるなあ。 なんて、内心思ってはいたけど。 その前に、何かを呟いてはいたよね?
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!