【IRapid approach 〜急接近〜】

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「………………………え?」 いま、なんて言ったの? よく聞こえなかった。 同じ事を聞くのは失礼よね。 なんて言ったんだろ? 戸惑う私を見て櫻井さんは深い笑みを浮かべた。 「お腹が空いたのよね?良かったら、どうぞ?」 にっこりと微笑んだ櫻井さんの手には、何かが入っている花柄の風呂敷。 「え?」 戸惑う私に櫻井さんは、にっこりと笑う。 「上條さんでしたっけ?彼女に沢山食べ物を頂いたので余っちゃったんたんです。私の弁当。はい。」 にこにこと笑う櫻井さんに圧倒されながらも、花柄の風呂敷を貰ってしまう。 「自信はないけれど。」 恥じらう櫻井さんに思いっきり顔を振った。 「折角なので、頂きます。」 花柄の風呂敷の結び目を開くと、おにぎりが二つある。 それも女の子が食べるような大きさではなく。 これは、まるで。 目の前にあるおにぎりと櫻井さんを交互に見る。 相変わらず、綺麗な笑みに言葉が出ない。 仕方がない。 折角貰ったものだし、第一お腹が空いて限界なのよね。 「……………じゃあ、頂きます!」 おにぎりをパクリと一口食べる。 にこにこと笑う、櫻井さんの目の前で食べるのは気が引けるなぁと思いながらも。 「……………………これは何の味?」 初めて味わう味に首を傾けた。 「私の家では、普通と違うの。漬物だけど、梅に似ているようなの。マズイかしら?」 櫻井さんの言葉に軽く首を傾けた。 梅干しのような赤い色をしているけど、酸っぱくはなくて、かといっても甘くはないし、塩の味もしない。 独特な味よね。 嫌いではないけれど。 初めて味わう味に戸惑ってしまう。
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