【IRapid approach 〜急接近〜】

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「‥‥‥‥‥‥‥‥櫻井さん?」 やけに色っぽい雰囲気をする櫻井さんに戸惑いを覚える。 こんなに大人びていたかな? 唇を舐めていたように見えたのは。 どうしてだろう。 「顔色が悪いわ。椅子に座れる?」 支えられていたせいか、櫻井さんの声が耳元に近づき、ぞくぞくと何故か鳥肌を感じた。 得体の知れない鳥肌。 何かが私の中で警告を発した。 ″‥‥‥‥ダメ、コレイジョウチカヅイテハイケナイ。ハナレナサイ!!‥‥‥‥″ 私の声のようで、声じゃない。 知らない声なのに、何故か知っているような。 ドンっと櫻井さんの身体を引き離すように押した。 【‥‥‥‥‥‥‥‥‥やっぱり思った以上に難しいのね、さすが、血は争えないって事かしら。】 離れていく櫻井さんの声が別人に聞こえる。 「あなた、誰?」 ゆっくり離れていく櫻井さんを見て、なんとか声を出した。 ぼやけて見えるのは、櫻井さんの目がやはり紅く見える。 それと、黒髪のオカッパでは無く。 銀色の髪で腰まで伸びている櫻井さん。 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?」 驚きのあまり、目の前にいる櫻井さんを確かめようと目を擦った。 『ごめんなさい!!あら、あなた達。』 明るい声のする女性の声が聞こえてきた。 『噂の転入生ね。どうしたのかしら。』 目を擦りながら、おそるおそる開く。 保健室の入り口にいたのは、白衣姿の女性、斉藤早希先生。 と。 私の目の前にいたのは、黒髪でオカッパ姿の櫻井瑠花さんだった。 「すみません。誰もいなかったので使ってしまいました。彼女の顔色が悪かったので。」 私に背を向けて頭を下げる櫻井さん。 「水無月さん、また貧血を起こしたのね?」 櫻井さんの言葉を聞いた斉藤早希先生が私を見る。
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