【IRapid approach 〜急接近〜】

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「貧血ですか?」 「ええ、彼女、ここへ来る時からの健康診断で引っかかっていたの。ヘモグロビンの値が低いのよ。ね、水無月さん。」 ゆっくりと顔を上げた桜井さんに、心配そうな顔をする斉藤先生。 「はい。」 不安そうな先生の言葉に頷いた。 小さい頃はなんでも無かったのに、ここ最近目眩が酷くて。 学校の健康診断で貧血とわかったのは中学生からだった。 苦手なレバーを食べたりしてはいたけど、一向によく治らない。 かといって、頑なに病院へは連れて行かない私の両親。 まあ、流石に風邪を引いて寝込んだら連れて行くとは思うけど、そこまでは無いのよね。 「まあ、病気じゃないとは思うけど。あまりにも長引くようなら一回見せた方がいいわ。」 「斉藤先生、ありがとうございます。」 ペコリと頭を下げる。 貧血と聞いた櫻井さんが、何か考え込むような雰囲気をしていたのは気にはなっていたけど。 「そういえば、あなた達。五時間目、とっくに始まっているわよ。」 斉藤先生の言葉に顔が引き攣ってしまう。 体育の授業だ。 すっかり忘れていた。 「私から後藤先生に手紙を書くわね?それで免除になるのを許して貰えるはず。」 顔が引き攣ってしまう私を見て、斉藤先生は苦笑いをしながら、自分の座る席へ歩いていく。 カタンと音を鳴らして座り、色々ある立ち並べてある書類の一式から一枚の紙を取り出して、何やら書いている。 そして、鍵のかかった机の引き出しに、自分の持っていた鞄を開いて印鑑と朱肉を取り出して、書類に判を押していた。
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