7人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「貧血ですか?」
「ええ、彼女、ここへ来る時からの健康診断で引っかかっていたの。ヘモグロビンの値が低いのよ。ね、水無月さん。」
ゆっくりと顔を上げた桜井さんに、心配そうな顔をする斉藤先生。
「はい。」
不安そうな先生の言葉に頷いた。
小さい頃はなんでも無かったのに、ここ最近目眩が酷くて。
学校の健康診断で貧血とわかったのは中学生からだった。
苦手なレバーを食べたりしてはいたけど、一向によく治らない。
かといって、頑なに病院へは連れて行かない私の両親。
まあ、流石に風邪を引いて寝込んだら連れて行くとは思うけど、そこまでは無いのよね。
「まあ、病気じゃないとは思うけど。あまりにも長引くようなら一回見せた方がいいわ。」
「斉藤先生、ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げる。
貧血と聞いた櫻井さんが、何か考え込むような雰囲気をしていたのは気にはなっていたけど。
「そういえば、あなた達。五時間目、とっくに始まっているわよ。」
斉藤先生の言葉に顔が引き攣ってしまう。
体育の授業だ。
すっかり忘れていた。
「私から後藤先生に手紙を書くわね?それで免除になるのを許して貰えるはず。」
顔が引き攣ってしまう私を見て、斉藤先生は苦笑いをしながら、自分の座る席へ歩いていく。
カタンと音を鳴らして座り、色々ある立ち並べてある書類の一式から一枚の紙を取り出して、何やら書いている。
そして、鍵のかかった机の引き出しに、自分の持っていた鞄を開いて印鑑と朱肉を取り出して、書類に判を押していた。
最初のコメントを投稿しよう!