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「はい。これを後藤先生に見せれば体育の授業は休められるから。見学許可書よ。」
斉藤先生から渡されたのは一枚の用紙。
「ありがとうございます。」
「いいのよ。あと、転入生さんは一緒に付き添ったと言えば見逃してくれるはずだから。」
にこりと可愛らしく微笑んだ。
「可愛らしい方ね。」
櫻井さんを見て、更に笑顔になる斉藤先生。
「ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げる櫻井さんに、ふふっと小さく微笑んだ。
「斉藤先生、私達行きますね。」
「気をつけるのよ?今は授業中だから。」
斉藤先生へ声をかけた私達は保健室を出る。
そういえば、お弁当の事気にしていなかったよね、斉藤先生。
疑問に思った私に、櫻井さんが口を開いた。
「おにぎりと水だったからよ。例えば、煮物とか、野菜炒めみたいな匂いのするものなら気づくでしょ?お茶でもカテキンの匂いがするし。」
「なるほど。」
言われて見ればそうよね。
保健室を出た私達は、運動場へ歩いていく。
今日は走り高飛びのテストがある日だった。
ある意味良かったかも。
走りながら、ホップステップジャンプとする競技。
バーの高さを飛び越える競技だけど、私は苦手なのよね。
何か苦手なのかって聞かれたら困るけど。
なんとなく宙に浮く、あの感覚が苦手だ。
バーを飛び越えていく、空を見るのは嬉しい人もいるみたいだけど。
気持ちがいいらしい。
だけど、私は何故か苦手。
なんでだろう。
「水無月さんはひとりっ子なの?」
ふいに櫻井さんが聞いてくる。
「え?私?うん。ひとりっ子よ。櫻井さんは?」
「私はね、二人。姉がいたんだど、私が生まれる前に亡くなってしまったの。」
「そうなんだ。」
急に、どうして聞いてきたんだろう。
不思議に思っていると櫻井さんの歩く足が止まった。
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