【IRapid approach 〜急接近〜】

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暫く歩いていると、至るところから視線を感じる。 なんていったって超美人だものね。 彼女、櫻井瑠花さん。 ただ歩いているだけなのに、何故か全身から気品を漂わせる雰囲気がある。 確か、いろんな所を転校したって言っていたわよね。 お嬢様なのかしら。 両親とは別々に住んでいるとは言っていたけど、今は別の場所。 もしかして、花嫁修業の為に婚約者と同棲かしら。 ありえるかもしれない。 私のおばあちゃんも、お父さんを産んだのが十七歳だって聞いた。 詳しい事情は知らないけど、確か勘当されたとかなんとか。 もしかして不倫だったのかな。 いちども会った事がない″おじいちゃん″ いったい、どんな人だったんだろう。 おばあちゃんが産む決心をしたって事は、それほどまで好きで。 でも、その″おじいちゃん″は知っているのかな。 むむっ。 人を真剣に恋なんてした事がないから、私は、まだまだ子供なんだろうな。 でも、そろそろいろんな事も知りたい。 何故、両親は逃げるように引っ越しをしたのか。 それと、あの噂は本当なのか。 だとしたら、私は。 「…………、………さん、……みな、……………水無月さん!!」 はっと我に変わった。 「……………どうしたの?気分でも悪い?」 いつの間にか、櫻井さんが顔を覗きこんでいる。 本当に整った顔。 二重で、睫毛は長く、目はクリンクリンとしている。 綺麗な鼻筋に、唇もぷっくりして可愛らしい形。 ピンク色というか、桃色のような唇だ。 こんな美人がいるなんて。 さらさらと流れる髪の毛が頬に当たったのか、掌で軽く撥ねのけていた。 「…………………私の顔に何かついているの?」 近くにいるはずなのに、やけに声が遠くに聞こえる。
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