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甘い匂いが微かに鼻を掠める。
麻薬のような、何か思考が遠のいていく。
なんだろう、頭が、考えが纏まらない。
ぼんやりと、だんだん意識がオカシクなっていく。
櫻井さん?
考えがさだまらない。
ぐるぐるぐるぐると頭の中で何か靄がかかっている。
ドサッ!!
大きな何かの音で意識が感覚を取り戻した。
【………………………邪魔をするなんて、意外だわ。】
櫻井さんが何か言っているけど、まだ頭がぼんやりとする。
貧血のせいなのかな。
だとしたら重症かも。
「今は授業中のはずだが、そこで何をしているのかな?」
ハスキーボイスの声が聞こえてきた途端に、櫻井さんがさっと離れた。
「……………すみません。彼女の具合が悪そうに見えたので覗きこんだんです。それよりも広瀬先生こそ、何をしてらっしゃるのでしょうか。」
やけにキツく聞こえる。
どうしたんだろう、櫻井さん。
私に背を向けているから表情が見えない。
でも、何となく怒っているような。
何故?
「そうですか。保健室には連れて行かないんですか?あと、″僕″は今は持っているクラスが無いので職員室へ向かう所です。」
櫻井さんの表情を見た広瀬先生がふっと笑った。
「そうなんですね。私達は先程保健室へ行ったばかりです。でも、気になるなら、やはり保健室に行くべきでしょうか。どう思いますか、広瀬先生。」
やっぱり声がキツく聞こえる。
貧血が酷いのかな。
だって、この二人、今日初めて会ったはずよね。
まさか、恋人同士では。
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