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「大丈夫です。櫻井さんに更衣室を案内しなくてはいけないので。体育の後藤先生には保健室の斉藤早希先生から貰った″見学許可書″を見せれば大丈夫!行きましょう。櫻井さん」
私の表情に何故か櫻井さんは驚いている。
「そうね。確か体育の授業中だったわ。広瀬先生、私達は失礼致します。」
目の前にいる広瀬先生へ深々と頭を下げた。
書類が散らばっているのは、気にはなっていたものの。
「大丈夫ですよ。これは教師の役目なので気にしないで下さい。」
広瀬先生の周りに広がる書類の紙。
気にすることなく歩く櫻井さんと、後ろを何度も振り返る私。
「手伝わなくていいの?」
「あれが教師の役目なんだから。いいんじやないかな。例えば他のクラスのテスト用紙じゃ見てはいけないわよね?手が滑ったのか落とした広瀬先生の責任よ。」
前を見ながら歩く櫻井さんに言葉が出ない。
なんで、櫻井さんは広瀬先生に対して口調がキツイのだろう。
やっぱり、恋人同士だから?
でも、なんとなく櫻井さんが主導権を握っているように思えるのは何故だろう。
それと、やっぱり病院へ行かなくては。
家族会議必要みたいな不思議な家だけど。
やっぱり私は知りたい。
いろんな事を。
ふいに歩いていた櫻井さんが。
【Knowing the truth is not always right(真実を知るのは正しいとは限らない)】
と小さく呟いた。
なんて言ったの?、
目眩のせいか、よく聞き取れなかった。
やがて、暫く歩いていくと更衣室が見えた。
「私、着替えてくるから待ってて欲しいの。
可愛らしく照れる櫻井さんに反論の言葉が出ない。
「私は待っとくから。大丈夫よ?」
「ありがとうございます。水無月さん。」
とびっきりの笑みを浮かべて、櫻井さんは更衣室の中へ入っていった。
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