【IRapid approach 〜急接近〜】

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「ごめんなさい、待ったかしら。」 カチャリとドアを開けて出て来た櫻井さん。 着痩せするタイプなのか、体操着姿の彼女も綺麗な人。 「ううん。大丈夫!」 櫻井さんのスタイル抜群に見惚れつつ、二人で運動場へ歩いていく。 すでに体育の授業は始まっていた。 走り高飛びのある場所まで歩いていくと、クラスメイトが沢山いる。 その中でも、一際目立つ女性がいた。 女子の体育担当、後藤美沙先生。 「今は中止、みんな集まって!」 パンパンと手を叩いて生徒を集める。 私と転入生である櫻井さんを交互に見た。 「あなたが噂の転入生ね。初めまして、体育の授業を受け持つ事になる、後藤美沙です。宜しくね。」 にこりと笑う。 「初めまして、櫻井瑠花と申します。宜しくお願い致します。」 綺麗な所作でお辞儀をする櫻井さんを見て、後藤先生は溜息をついた。 「可愛らしい方ね。所作も綺麗だし。これじゃあ、男子が騒ぐのもわかるわ!」 うんうんと頷いていた。 「ですよね、後藤先生!彼女、私と友達になったんです!」 興奮するように出てきたのは上條さんと、取り巻きの二人。 ″実家がお金持ちだからといってもね″ ″止めなさい、目をつけられるわよ。″ 至るところから、ひそひそ聞こえてくる。 そんな事を気にしない上條さんはふふんと鼻を鳴らした。 「あら。水無月さん、今日も見学?」 私の姿を見た後藤先生。 「はい、目眩がしたので、斉藤先生から許可を頂きました。」 斉藤先生から貰った一枚の紙を渡す。 「仕方ないわね。じゃあ、あちらにベンチがあるから座って見学してね。じゃあ、みんなは測定開始よ!」 始めましょ! パンパンと手を叩きながら走り高飛びのある場所まで生徒を引率していく。 私は、近くにあったベンチまで歩いていく事にする。
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