【IRapid approach 〜急接近〜】

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高飛びの前には沢山の生徒達が立っている。 後藤先生がチェックをする為に用紙をぶら下げて測定を測る為に笛を口に咥えて用意をしていた。 ピッ! 笛の音が鳴り、次々と飛んでいく。 バーの高さはそれほど高くない。 競技を争う訳ではない。 単なる授業の一環。  でも成績の為にみんな飛んでいく。 そんな中、櫻井さんの番が来た。 興味津々の中、みんなが見ている。 軽く屈伸運動をした後、後藤先生の笛の音に合わせて走りだす。 バーを軽く飛び越える、その姿に何故か胸が胸騒ぎをした。 あの光景、どこかでみた事があるような。 何処で? 高飛びの競技なんて見慣れているはず。 そう、小学生、中学生、高校と体育の授業の一環で見るもの。 それに、テレビでも競技として、よく放送されていた。 でも。 なかなか飛べない私は何故かトラウマがあって飛べない。 どうして私は飛べないの? 何故トラウマがあるのか。 トラウマがあるって事は昔、何かがあったはず。 私に何があったの? ぐるぐると考え込む私を見て、櫻井さんが小さくほくそ笑んでいる。 【I remember my memory(記憶を思い出すのよ。)Who are you really(本当は貴方が誰かを。】 『櫻井さん、綺麗な飛び方ね!!』 わっと人だかりが集まる。 無理もない、見惚れるような飛び方にクラスメイトが集まっていく。 一方で、私は動けずにいた。 櫻井さん、何か言っていたわよね? 私を見て。 明らかに私を見て言っていた。 遠くだったけど、あれは日本語ではなく英語。 口の動きでなんとなくわかる。 なんのために? あなた、いったい誰?
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