7人が本棚に入れています
本棚に追加
「結衣?」
ふいに声をかけられ身体がビクッと魚篭ついた。
「夏穂ちゃん。」
顔を見上げれば見慣れた顔に安堵する。
この街に来て十年。
ずっと、私の側にいた幼馴染でもあり親友でもある夏穂ちゃんの声に思わず抱きしめた。
「え?結衣、どうしたの?」
私、レズじゃないわよ。
なんて笑いながら話している夏穂ちゃん。
もしかして百合が好きなの?
そうなの?
ね、結衣。
「あのね、夏穂ちゃん!いくら冗談でも。」
「やっと元気でた?」
ゆっくりと離れていく夏穂ちゃんは、少しだけ顔を歪ませてはいたものの笑顔で笑っていた。
「ごめん、夏穂ちゃん。」
シュンと落ち込む。
「いいって。ね、帰りにクレープ食べない?美味しいクレープ屋さん知っているんだ。今日からオープンだって!」
にこにこと笑う夏穂ちゃんに、ようやく心が落ち着いていく。
「食べたい!!あ、でも。お金が。」
「いいわよ、今日は奢りにする。ね?」
「ありがとう、夏穂ちゃん。」
「あのバカも着いてくると思うけどね。」
思いっきり溜息をついた夏穂ちゃんは、男子生徒達がいる体育館の方へ顔を向けていた。
「和樹君?」
「うん、そうよ。」
「甘いのが好きってよりは。」
チラッと私を見る。
ん?
わからない私を見る夏穂ちゃんは、軽く溜息をついた。
「可哀想な和樹。花束を送りたくわ。」
そう言って憐れみで遠くをみる夏穂ちゃん。
「ま、ボディーガードならいいかもね。頼りになるかわからないけど。」
更に深い溜息をついた。
最初のコメントを投稿しよう!