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私は、夢を育てる仕事をしている。
***
「これでまた一歩、環境問題への解決に近づいたというわけですね」
女性アナウンサーの大げさに明るい声が、社員食堂に響いた。
「……あ」
テレビ画面に映った少年の顔に朝陽は見覚えがあった。向かいに座っていた鷹野が顔をあげて、切れ長の瞳で朝陽の視線を追う。
「環境問題とか興味あったっけ」
「違うし失礼だし、あと鷹野も一緒に診断したんだけど」
鷹野はもう一度画面を凝視して――それからようやく、ああとうなずいた。
「移し替えた奴?」
朝陽の言葉とテレビの内容から判断したらしい。正解を述べた鷹野は、それでも少年に興味がなさそうだった。
「初めて現場に行った時の子」
もうあれから二年もたつ。夢の移し替えから頭角を現す時期や度合いは人それぞれだ。けれど自身が診断して、こうしてテレビにまで取り上げられるようになった子を見たのは初めてだった。
「あの田舎の高校か」
ようやく思い出したらしい鷹野は、適当な返事で唐揚げを口に放り込んだ。朝陽と鷹野は同期だが、三年前の入社当時から鷹野のこの姿勢は変わっていない。
この会社が取り扱うのは夢。あるべき場所へ夢を運ぶ仕事だ。
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