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子どもが夢を見るのはいい。当人にとって糧となり周りをも微笑ませる。ただし大人になるにつれてそれは表情を変え、時には害悪となる。現実味のない夢に身を滅ぼしていく人が及ぼす影響を、ある研究機関がデータ化して国に持ち込んだのが始まりだった。
その経済損失の大きに国は愕然とした。もし叶えられない夢を持つ人がそれを諦めて分相応な仕事をしたら。能力のある人がそれを生かせる夢を持ったら。国は、世界は、もっと発展できる。
そこで政府は考えた。実現するためは根本を絶てばいい。
――そうして、夢の診断と移し替えが実行され始めたのはもうずいぶんと前の話だ。
朝陽や鷹野が勤めているのは、国内で唯一それを請け負う会社。
「ていうか明日行くところじゃん」
鷹野は端末を開いて、げ、という顔をした。予定は月初に通達されているはずだが、鷹野が確認するの大抵直前だ。
「じゃあ明日、六時半の電車ね」
朝陽はお盆を持って立ち上がった。
「はいはい」
鷹野は自分からそこに座ったくせに、早く行けと手で朝陽を追いやる。後ろで聞こえたニュースは、いつの間にか人身事故の話題に変わっていた。
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