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「あーめんどくさ」
診断用の眼鏡と自身のタブレットとの通信を確認して、鷹野が効果音でもつきそうなほど大きなあくびをした。
「ちょっと」
「誰もいないから大丈夫だって」
朝陽は思わずため息をついた。スーツ着用で教育者然と見せかけている努力はいったいどこに。
空き教室の一つを借りて、準備を手伝ってくれた教員は少し前に出ていった。しかしいつ誰が廊下を通るかは分からない。学校机を三角形に並べた二辺に腰かけた鷹野と朝陽は、生徒が入ってくるのを待っていた。
二年前は緊張で周囲をみる余裕がなかった。昨日思い出したせいか、懐かしさは感じられないのに感慨深い。朝陽が教室を見回していると、こんこんと控えめな音が引き戸を叩いた。
鷹野が眼鏡のスイッチを入れる。朝陽はタブレットで生徒の情報を呼び出して、どうぞ、と返事をした。
一人目は大人しそうな女子生徒。
「こんにちは」
「‥‥‥こんにちは」
「ごめんね、緊張するよね」
「いえ、すみません」
「ううん、雑談だと思って付き合ってくれればいいから」
残った一辺に腰かけた生徒に、朝陽は事前にまとめられた情報を確認しながら質問をしていく。
定期的に行われてきたアンケートなどの非対面調査によって、既に生徒全員が大きく五段階に分けられている。
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