夏祭りです。

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「わ、たしも、 衛くんと、たくさん お話したい。 衛くんを、 もっと、知りたい。」 もう、花火は ラストスパート。 どんどん打ち上げられる 花火で、顔が鮮やかに 照らされる。 衛くんが、私の頬に 手を添えました。 言葉を交わさなくても、 目で、伝わる心。 そっと口付けされた瞬間、 花火の音が遠くなって、 私のすべてが、 衛くんに染まりました。 ゆっくりと離された 唇から、はっ・・・と 吐息が漏れます。 「・・・俺も、 知りたい。」 衛くんはこう言うと、 また、キスをしようと しました。 「待って、」 私はきゅ、と衛くんの 服を握ります。 これは、魔法。 リップの、魔法。 「・・・私から、 しても、いいですか?」 そっと訊ねれば、 衛くんは少し驚いて、 それから、優しく 笑いました。 「してくれんの?」 「・・・・はい。」 魔法が、 私を少し大胆にする。 私は、ゆっくりと 衛くんと唇を重ねました。 柔らかな、幸せ。 衛くんの服をより 強く握ると、 衛くんは私の腰を くっ、と引き寄せます。 「・・・、」 いつの間にか、 ごく自然に、 舌が、触れ合う。 それが、当然かのように。 初めてなのに、 心地よい、優しさ。 唇を離すと、 衛くんがふっ、と 甘く目を細めました。 「花火、 終わっちゃったな。」 そう、ですね。 でも、いいです。 私は、あなたが好き。 今まで、いろいろ ありました。 「私なんて」と常に 思っていた私は、 あなたと一緒なら、 変わっていけそうです。 そうして、 いつまでもあなたの 隣にいたいの。 (Fin.)
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