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そしてお盆休み。
「忘れ物ないか? 戸締りとガス、もう一度確認しよう」
「アンタ相変わらずマメだね」
「……よし。行くか」
テンション低めな村瀬と車で実家に向かう。
「あー、気が重い」
「そんな、何回も言うなって。今度、服か、なんか買ってやるからさー」
「安いなー。服5着くらい買ってもらわないと気が収まらないよ」
鼻で笑った。
「じゃー5着買ってやるから。……そんなに嫌か? 俺は楽しみだけどな」
「アンタは自分の家に帰るんだから、そりゃそうだろうね! 私は他人の家に泊まりに行くんだよ? 家族の楽しい輪の中に、他人の私が1人紛れ込んで楽しいわけないでしょ?」
不機嫌そうに「何も分かってないね」と付け足される。
「オマエだって家族になるんだろ? 俺の奥さん——」
「ほぼ! ほぼ奥さん! まだ『俺の奥さん』じゃないから!」
「悪かったよ! 俺のほぼ奥さんなんだから、俺の家族もオマエの義理の家族だろ? 義理って言っても家族は家族なんだから」
(今日、すげぇ機嫌わりぃな)
先行きが不安になってきた。
「なにが『家族』だよ……」
薄く笑ってそれから何も話さない村瀬。
しばらく黙って運転を続ける。
「……なぁ、ばあちゃん、どんな人だった?」
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