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 村瀬と話をするのが必要だということはわかっていた。でも正直怖い。村瀬はそういう感情が薄いこともわかっている。重い関係がキライなことも。  何年か前。ホテルで行為を終えたあと、身支度を終えた村瀬が電話をしていた。 「は? マジでやめてくれない? ウザい。もうアンタとは終わり。じゃーね」  いかにも不機嫌そうに怒り電話を切る村瀬。 「なに? だれ?」 「誰だっていいでしょ? アンタもそんな面倒なこと言うわけ?」  ただ軽く聞いただけなのに睨まれた。 「いや、ちょっと気になっただけだろ?」 「私に深入りしてこないでね。そんなことしたら、すぐ関係切る。ホントにキライなんだよね。ウザい」 「オマエ、誰か1人とちゃんと付き合おうと思わねぇの? 好きなヤツとかさー。いねぇのかよ」  支度をしながら笑って聞いた俺に、ため息混じりに「くだらない」と笑う。 「思わないし、そんなヤツいない! なんで付き合う必要があんの? 好きだと思ったらヤれればいいじゃん。体だけで十分」  村瀬はそういう女だ。少なくとも俺はずっとそう思っている。だから、真面目に議論を交わすと「面倒だから、やめるわー」とか言われる可能性が高い。それが怖かった。
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