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「は? いーよ! そんなの。親、関係ある? 心配しなくても反対なんかされないよ。……私のことなんて興味ないだろうし。アンタ、まさか結婚式挙げようとか言わないよね? やらないからね? そんなの」
付き合うことは半ば諦めたように了承してくれたが〈親に挨拶〉という言葉には強く拒否をする。
「結婚式を挙げない」ということも結構傷ついた。村瀬の気持ちが本当にわからない。
「……まぁ、いいや。わかったよ。……もういい」
これ以上話すと俺が耐えられなくなりそうだと思いそこで話を切り上げた。
「ねぇ……もういい? ヤらないなら帰るけど」
「……帰るなよ。俺はオマエと一緒にいたい」
面倒くさそうに言って帰ろうとする村瀬を抱き寄せる。そのまま行為をした。
この時間だけは……行為をしている間だけは、村瀬の気持ちを感じることができる。それがどこまでの気持ちかわからなかったとしても、毎回、俺の気持ちは満たされていた。
俺の名前を呼び、俺の目を見て、快楽に溺れる村瀬が俺の腕の中にいる。言葉で気持ちを聞けなくてもそれだけで満足だった。
逃げだということはわかっている。でも、これでいい。村瀬が俺の側に少しでもいてくれるのなら……子供ができればずっと側にいてくれるのだから。
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