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「うーん。それってさー、仮に子供できて結婚してもうまくやっていけるのかな? 俺、そっちのが心配になってきたよ。彼女、なんでそこまでキミに気持ち言わないんだろうね」 「知らないっすよ。気が強いから俺に弱み見せたくないんじゃないっすか? 俺が聞きたいくらいっす……」  卑下したように笑う。 「キミが逃げてるんじゃないよね? はっきりさせるのが怖いから、ぬるい関係のまま居たいから、子供さえできれば自分のものにできるから……まさかそんな風に考えてないよね?」  どことなくそんな気がしてしまった。俺の言葉に視線が泳ぎ、俯く小久保。返事は返ってこない。 「だとしたら、それじゃダメなんじゃない? もっと本気でぶつからないと。彼女に近づけないよ。……いつまでも本当の気持ち、聞けないんじゃないの?」  フッと笑い、俺を見る。 「前に聞いた言葉っすね『彼女に近づけない』って。でも無理っすよ。村瀬は八重田と違う……本当にすぐどこか行っちゃうんっすよ。俺が距離を詰めたら簡単に逃げますよ、村瀬は」  そう言ってその場を後にした。 (はぁー、世話の焼けるヤツ)    フロアに入ると彼女の姿はない。 (会議室かな)
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