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 ふと村瀬さんの姿が目に入った。黙々と仕事をしている。無駄話もせず、淡々と。  見かけで判断するのはよくないが、服装やメイクなどから確かに気の強そうな印象は受ける。女を武器としないようなサバサバとした……なっちゃんと同じような雰囲気を感じた。 (興味があるっちゃあるよなー)  小久保から聞いた話と彼女から聞いた話があまりにも違うことや、さっきの小久保の様子から、村瀬さんと少し話してみたいと思った。 (でも、ここではさすがに聞けないな)  ちょうど彼女がフロアに戻ってきた。 「ねぇー、村瀬さん。おじさんと飲みに行かない?」  村瀬さんの横に立ちわざとらしく誘う。 「は? 何言ってんですか? 行きませんよ。……ねぇ、八重田さん。八重田さんの旦那が堂々と誘ってくるんだけど。マジ迷惑だからやめさせて?」  あからさまに嫌そうに自分の席に戻ろうとする彼女を呼び止めて抗議した。 「え? あ、すみません。……もう、何やってるんですか?」  小さな声で怒る彼女。 「えー、だって、おじさん気になるんだもん。今までこういう子と接点なかったからさー。話、聞いてみたいんだよね」 「今井さん、これからそんな経験積んでどうするんですか? 女遊びする気になったんですか?」
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