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「……だから嫌なんだよ。理詰めにしてくる男って本当にキライ」  俯いてフッと笑い、ボソッと言う。 「小久保くんはこんな風に攻めて来ないんでしょ。残念ながら俺はキミに好意がないからね。こうやって攻めるの得意だし。……小久保くんには言わないからさ、本当の気持ち教えてくれない?」 「八重田さん、大変だね。こんな人と一緒にいて。嫌にならないの?」  笑いながら彼女に話を振る村瀬さん。 「え? うーん、嫌じゃないですよ。たくさん話聞いてくれるし、今井さんと話すの楽しいです」 「琴音ちゃんは素直だからね。まぁたまにそうじゃない時もあるけど、純粋に言葉のやり取りができるから。キミとは根本的に違うんだよ」  わざと割って入る。 「ホントに性格悪いですね。……あのね、今井さん。人の気持ちなんて変わるし、いつか私の元からいなくなるんですよ、絶対に……。たとえ家族でも。だったら気持ちなんて交わしたって意味ないでしょ?」  薄く笑いまっすぐに俺を見て言った。 (これが村瀬さんの本心か) 「離れるときに辛くなるから気持ちを交わしたくないってことでいいのかな? 子供ができなかったら小久保くんと離れるつもりだからその時に傷つかないため……なんだね」 「違う!」
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