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『キミが逃げてるんじゃないよね? はっきりさせるのが怖いから、ぬるい関係のまま居たいから、子供さえできれば自分のものにできるから……まさかそんな風に考えてないよね?』
(何がいけねぇんだよ……その通りだっつーの)
今井さんに言われたことを何度も思い出す。あの日、今井さんは村瀬を誘った。きっと何か話を聞いたはずだ。
(アイツ、今井さんには本当のこと言ったのか?)
そんな疑問が浮かびつつも何事もなかったかのように仕事をこなす。村瀬も特に変わった様子はなくいつも通りだった。
あの話をして以来会っていない。周りにバレてから会う頻度は低くなっていた。仕事以外の会話もない。どうにかしたいとは思っている。でも正直どうしたらいいのかわからないでいた。
そんな2月下旬のある日。現場に直行し仕事を終え、会社に戻ると村瀬がいない。……というか、出社している様子がない。
「おつかれーっす。……村瀬は?」
「あー、なんか休むって連絡あったみたいだよ。体調不良かな……ですよね? 班長」
「朝、連絡あったぞ。熱があるから休むって。お前何も聞いてないのか?」
「え? マジっすか?」
知らない。そもそも連絡を取り合うような仲ではないのだ。
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