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「……やっぱり出ないよ。とりあえず折り返し待つしかないんじゃない?」 「わかった、ありがとう」 「うわ『ありがとう』だって。珍しい」  気味悪がられたが、三井の言うように待つしかなさそうだ。それからまた別の現場に向かう。 「小久保です。おつかれっす。村瀬から連絡入りました?」 「お疲れ様です。村瀬さん? まだ連絡ないみたいですよ」 「そーっすか。どうも」  気になって会社に何度か連絡を入れた。 (まだ連絡ないのかよ。マジで大丈夫なのか?)  家族と疎遠になっていることは前に聞いたことがある。唯一ばあちゃんと仲がよかったが、数年前に亡くなったということも聞いていた。つまり、病気になって看病をしてくれるような身内は俺の知る限りいない。  夕方になり会社に戻る。 「おつかれーっす。村瀬は?」  フロアに入るなり、周りに聞いた。 「まだ連絡ないぞ。さすがにちょっと心配だな」 「私も何度も掛けてるんだけどさ、全然出ないんだよね。Rainも既読にならないし。何もなければいいんだけど」  三井が心配そうに俺に言いに来た。 「お疲れ様でーす」 「お疲れ様です、失礼します」  今井さんと埼玉の女の子が八重田の席の横にあるミーティング用の広いデスクにやって来る。 (あー、今日勉強会か)
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