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「なに? どうしたの?」
俺たちの様子を見て今井さんがサラッと聞いた。
「村瀬さん、体調悪くて休むって朝連絡が入ったっきり連絡つかないんですよ。みんなで心配していて」
八重田が控えめに説明する。
「小久保、お前、気になるなら村瀬の家行ってきてもいいぞ。班長の俺が許可するから」
「……知らないんっすよ。アイツの家」
「は?」
「だから! 知らないんっすよ!」
思わず当たり散らしてしまった。今日、何度も思った。家に様子を見に行きたいと。でも知らない。俺は、村瀬のことを何も知らない。
「……まぁ、アレだな。調子悪くて寝てるんだろ。そんなに心配するなよ、小久保。な?」
班長が気を使って笑って言ってくれたが、そんな言葉は気休めにもならなかった。
「……何かあったらどーするんっすか? 倒れてるかもしれないし……最悪の事態になってたら……どーするんっすか」
「そんな……ただの風邪か何かだろ?」
「……ウソかもしれないじゃないっすか。こんなに電話してんのに、連絡つかないっておかしいっすよね」
一日中、嫌な予感がずっとしていた。
『生きてるのって疲れるよね』
『死んだ人に、いつかどこかで会えるのかな』
アイツが前に言っていた言葉が思い出される。
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