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「オマエさー……この住所、俺んちと近いんだけど。何でいつも別の方向に帰るんだよ。はぁー……まぁ、いーや。行く時また電話する。ちゃんとあったかくして寝とけよ? じゃーな」
そう言って電話を切った。
「はぁー、マジでよかった。っつーか、本当にバカなヤツ。あー、疲れた」
思わず普通の声量で独り言を言ってしまう。どことなく静かなフロア内。
「……小久保。なんか悪かったな。お前、結構マジなんじゃん」
「村瀬が相手だと大変そう。お前にちょっと同情するわ。アイツ、気強いしな」
「小久保さん、意外と優しいんですね。俺、見直した」
(あ、やべぇ。会社だってこと頭から抜けてた)
「すみません。お騒がせしました。とりあえず生きてました。三井さんもありがとうございます」
急に照れ臭くなる。
「よかったね。彼女、死んでなくて。まあ、キミがいるのに死ぬわけないとは思ってたけど」
ニヤッと笑って俺を見る今井さん。
「……今井さん、やなヤツっすよねー。わざわざそんなこと言わなくてもいーじゃないっすか」
「村瀬さんにもさんざん言われた。性格悪いですねって。でもさっき言ったこと、本当だよ。キミの気持ちもわかるけど、少しずつ詰めていった方がいい。彼女の話聞いた俺からのアドバイス」
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