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「どーしたんだよ。俺が勝手に来たんだから気にすんな……ゆっくり休めよ。じゃーな」  緩く笑った小久保が柔らかい口調でそう言って、バタンと玄関のドアが閉まる。 (本当にありがとう、レン)  鍵を閉めてベッドに戻り、クマのぬいぐるみを抱く。  本当はずっと心細かった。風邪なんて滅多に引かないし、こんな高熱を出すのも何年ぶりかわからないほど。1人っきりで不安に押しつぶされそうだった。  小久保が「家に行くから住所を教えろ!」と言った時は正直うれしかった。でもアイツも仕事が忙しいのは知ってるし、迷惑をかけたくなかった。弱みを見せたくなかった。  でも本気で心配している声で「頼むよ、ユリ。……マジで、オマエのこと心配なんだって」そんな風に言われて折れた。  うちに来てからもアイツはずっと優しくしてくれた。私も素直にそれに甘え、なんだかすごく……フワフワしたいい気分だった。 「オマエの体の方が心配だ、無理するな」  そんなようなことを何度も言うアイツに、心の底からうれしかった。それに、意外と気が利くところがあって結構驚いた。  おかゆを温めてくれたり、私がシャワーを浴びている間にテーブルの上を片付けてくれたり、ベッドに布団を戻してくれたり。クマを大事に扱ってくれたり……。
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