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あれには驚いた。そして、うれしかった。大事なクマのぬいぐるみがきちんとベッドに寝かされていたのだ。投げたりせず、丁寧に扱ってくれたことがわかる。なんとなく私に対するアイツの愛情を感じてしまった。
あの日、今井さんと話して、少しだけ何かが変わった気がする。深い交わりを避けていたけど、あんな風に踏み込まれて、ずっと心の中にしまっていたことが久しぶりに表に出てしまった。言葉にしたとき、不思議と少し気持ちが軽くなった気がした。
今井さんに「彼にそんなに好きじゃなかったって言ってあげられるもんね」と言い当てられた時にはさすがに動揺した。そんなこと小久保に知られたら、もうこの手が使えなくなってしまう。
期待すると傷つくのは自分。相手は悪くない。自分が勝手に期待したせいで傷つくのだから。だったら耳心地のいい言葉なんて信じない。意味のない言葉のやり取りだ。いつかは私の元から去っていく。どうせ死んでしまうのだから。
ずっとそう思ってきた。
……でも、アイツは違うのかもしれない。ここ最近少しそう思うようになってきている。私からの言葉なんてなくても、愛情を傾けてくれる。ずっと。
(とか言って、どうせ、いなくなるんだよね。やめよ。……どうせ死ぬし)
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